ナレーション |
20世紀も末な某日、自称ミツエモン御一行と名乗る黄色い袴を着た老人と青い袴を着た2人からなる怪しげな外人達が、一路金沢を目指し旅を続けていた。 |
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(時代劇の旅の人ってな感じの服装をした怪しげな外人さん御一行がてくてくと歩いている) |
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御隠居(と自らを呼ぶ変な外人。年寄り) |
いやー今日もいい天気ですなぁ。角さん。 |
角さん(と呼ばれる外人) |
いつまでこんな旅を続けるんですか。訪問先の担当の人もカンカンですよ。 |
助さん(と呼ばれる外人) |
おぃ、あそこで娘さんが襲われているぞ。 |
娘 |
お願いです。もう少し待ってください。 |
チンピラA |
うるせぇ!てめぇショバ代をどれだけためたら気がすむんだ。 |
チンピラB |
でもよう、その体を俺達に差し出してくれたらもう少し待ってやってもいいぜぇ(汚い笑み)。 |
角さん |
おい、お前ら何をしている。 |
チンピラA |
なんだてめぇ。ガン飛ばしてんじゃねーよ!たたんじまえ!! |
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(適当な効果音を入れてやってください) |
チンピラB |
畜生。覚えてやがれ!(足早に去っていく) |
助さん |
(手を払いながら)ザコキャラは万国共通だなぁ。 |
娘 |
はぁ。(絶望のため息) |
御隠居 |
娘さん。もしよければこのじいに訳を話しては貰えませんかな。話せば楽になりますよ。 |
娘 |
あ、あのあなたは? |
角さん |
実は、(娘の耳元で)ちょっとこのところちょっとボケてきておりましてテレビの『黄門様』のまねをしたがるんですよ。まぁ、人生残り少ないし好きにしてやろうと。 |
御隠居 |
あぁ、私は越後でちりめん問屋を営んでおりますミツエモンというもので、こちらがともに連れている角さんと助さんです。 |
娘 |
はぁ(どうしようもないため息)。まぁ立ち話もなんですしこちらへ。 |
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(昼間。加賀友禅を作っている娘さんの家にて。) |
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家の主人 |
どうも娘が危ないところを助けて頂いたというのに、こんな粗茶しかだせなくて恐縮ですが。 |
御隠居 |
ほぉー、これが加賀友禅ですか。色使いが美しい。やはり実際に見ると聞くとでは違いますなー。 |
娘 |
でも、こうして作れるのもあとわずか。あの鬼薔薇組さえなければ。 |
助さん |
なんですか?その鬼薔薇組と言うのは。さっきのチンピラ達となにか関係が? |
家の主人 |
鬼薔薇組というのは最近この辺りにやってきたヤクザで、ショバ代と称しては辺りの弱い者から金をむしりとったり反抗する者には嫌がらせをしたりもうやりたい放題で。 |
角さん |
それはひどい。 |
娘 |
はぁ(遠い空を見ながらのため息)。警察に問い合わせても「現行犯じゃないとダメだ」とかなんとか言って。もうこの土地もむしりとられるしかないのかしら。 |
御隠居 |
もし良ければ、その件このじいにも手伝わせては貰えませんかな? |
家の主人&娘 |
え?! |
角さん |
また日程が遅れるのか。 |
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ナレーション |
てなわけで、自称黄門様御一行はちょっと目の辺りに青筋を立てた加賀友禅の一家を後目に居座ったのであった。しかしながら彼らは(大抵が御隠居による)多少のミスはあったものの生き生きと加賀友禅の仕事を手伝うので、一家の瞳にも輝きが戻ってきた。 |
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(夜中、町の警察署の署長室。あたりはひっそりと静まり返っている。) |
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町の署長 |
例の土地収容の件、うまくいっているのか? |
組長 |
すみません。加賀友禅のところに変なじじいがいついてしまいまして。まぁ今日のところはこのお菓子でご勘弁を。 |
町の署長 |
(パカッとお菓子蓋を開けて底を見た後)ふっふっふっふっ。組長。おぬしも悪よのう。 |
組長 |
いえいえ署長さんにはかないませんよ。 |
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(しばし悪人笑いをし合う2人。しかしいきなり”ゴトッ”という音が) |
組長 |
だれだ! |
怪しい金髪の女子高生 |
わったしでーす。みたいなー(半疑問形) |
町の署長 |
組長、お前の女か? |
組長 |
ここへは来るなと言っただろう。じゃぁちょっと用事がありますんで。じゃあ。 |
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(加賀友禅を作っている娘さんの家へ戻る) |
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角さん |
どうだやつらの状況は。 |
助さん |
やっぱりご隠居の読み通り、鬼薔薇組と警察とは癒着がありました。それにしてももう勘弁してくださいよ、女子高生のフリをして近づくの。 |
御隠居 |
ご苦労さまでした。次はこの書状をもって石川県警の署長さんの所へ行って貰えませんか? |
家の主人 |
あの、あなた様は一体何者で? |
御隠居 |
ただの旅好きのジジイですよ。ただちょっとばかりお節介なのがたまに傷ですけどね。 |
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ナレーション |
そして、それからさらに数日の時が流れたある日のこと。 |
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(朝、娘さんの家の前にて。スズメの鳴き声が聞こえる) |
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家の主人 |
さて、今日も仕事を始めるか。 |
チンピラA |
その必要はねぇ! |
家の主人 |
(おびえながら)な、何だ!お前達は。 |
チンピラB |
ふっ、お前達がいつまでたってもショバ台を払わねえから鬼薔薇組が総出でご丁寧にぶっ潰してやろうっていうんだよ! |
組長 |
やれっ! |
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(その時、突如主人の後ろからご隠居が現れる) |
チンピラA |
なんだぁテメェは?! |
御隠居 |
角さん助さん。懲らしめてやりなさい。 |
角さん |
御隠居。助さんはまだ戻ってきていませんが。 |
御隠居 |
・・・懲らしめてやりなさい。 |
角さん |
はっ!! |
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(御隠居と角さんは向かってくるヤクザの皆さんを次から次へと峰打ちにしていく。辺りの物を派手にぶち壊しながら。) |
娘 |
あぁあぁあぁあ!(混乱) |
組長 |
貴様!何奴!! |
御隠居 |
もういいでしょう。 |
角さん |
ひかえひかえ!この星条旗が目にはいらぬかぁ! |
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(バーンと効果音が) |
組長 |
あ、あなたは第43代ピーター副大統領! |
チンピラの皆さん&娘 |
ははぁっ! |
家の主人 |
ま、まさか、このお方が数日前から日本にやってくるなり行方をくらましていたピーター副大統領だったなんて。 |
助さん |
おら!早く歩け! |
町の署長 |
へへぇー。 |
県警の署長 |
副大統領、知らせを聞いて飛んで参りました。一体緊急の要件とは? |
御隠居 |
ちょっと忍びの旅をしておった途中、この者らが結託し辺りの土地をむりやりむしり取って周りに迷惑をかけておったのを見かけてな、ちょっと灸を添えてやりたくて知らせたわけじゃよ。 |
町の署長 |
(悪党笑いしながら)いきなり私を連れてきて何かと思えばご冗談を。私はこの者など存じません。 |
組長 |
そ、そりゃねーだろ! |
町の署長 |
うるさい! |
助さん |
えーい、ギャーギャーわめき上がって!この女装が目に入らぬかぁ!! |
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(ガーンと効果音が) |
組長 |
まさかお前が! |
町の署長 |
くそっ。これまでか。 |
県警の署長 |
この者達をひったてい! |
警察官 |
はっ。(鬼薔薇組の皆さんと町の署長を現行犯逮捕する) |
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娘 |
はあぁぁぁぁぁ(最高のため息)。副大統領様どうもありがとうございました。 |
家の主人 |
これで安心して加賀友禅に打ち込む事ができます。 |
県警の署長 |
さて副大統領、後は我々が用意しました護送車でお送りしますのでどうぞこちらへ。・・・って、あれ?!副大統領は?副大統領ーっ!(叫ぶ) |
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ナレーション |
20世紀も末な某日、自称ミツエモン御一行と名乗る黄色い袴を着た老人と青い袴を着た2人からなる怪しげな外人達が、今日も一路金沢を目指し旅を続けていた。 |
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(時代劇の旅の人ってな感じの服装をした怪しげな外人さん御一行がてくてくと歩いている) |
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助さん |
ちょっと嫌でしたけど。やはり、良い事はするものですね。 |
角さん |
まだ歩いて金沢まで行くっていうんですか?もう来日中のスケジュール狂いまくりですよ! |
御隠居 |
ホーッホッホッホッ。 |
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ナレーション |
希望に夢を膨らます加賀友禅の親子を後に足どり軽い御老公であった。 |
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(おしまい) |